研究概要 |
(1)HPFRCCの引張試験装置の提案 ひび割れ幅が細かく引張力を分担できる繊維補強モルタル(HPFRCC)を対象として,簡便な引張試験方法を提案するとともに,HPFRCCの引張性能と供試体厚さの影響について検討した。供試体厚さの違いによる引張強度や引張降伏強度の差はほとんど認められなかったが,引張終局ひずみのバラツキは,供試体厚さが大きいほど大きくなることを明らかにした。 (2)HPFRCCの水中環境下での疲労性状 FRP製のプレート型ジベルをずれ止めに用いて,HPFRCCを上而増厚した鋼床版について,水の存在が疲労特性におよぼす影響を検討するため,水の影響を段階的に変化させた環境での輪荷重走行試験を実施した。表面および下面に流水がある状態では,乾燥状態の試験と比較して疲労耐久性の低下は生じないが,鋼床版上面からECC上面までを完全に水浸させて,荷重の作用範囲近傍を密閉させた状態では,比較的早期に損傷を生じることを確認した。 (3)繰返引張荷重下でのHPFRCCのひび割れ部の挙動 HPFRCC引張供試体を対象として,鉄筋降伏ひずみレベルにおいて繰返し引張応力を与え,ひび割れ部の引張挙動に及ぼす繰返し荷重作用の影響について検討した。繰返し載荷後における変位は,繰返し載荷前と比較して3〜6割程度増加した。繰返し荷重を受けた後の応力変位挙動は,処女載荷と同等の性能を保持しており,さらに擬似ひずみ硬化や複数微細ひび割れ特性を示した。 (4)土木学会の指針への研究成果の反映 引張試験方法をはじめ,この研究で得られた成果を,土木学会の設計施工指針に反映させた。わが国におけるHPFRCCの利用状況を国内外で報告した。
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