研究概要 |
二酸化炭素を含む酸性物質によるセメント硬化体の分解のメカニズム(水和生成物の種類による分解速度の違い,分解を開始する酸濃度の違いなど)を明らかとし,これらを考慮した酸性物質の作用によるコンクリートの劣化進行速度の予測を可能とする解析手法の提案を行うことを目的として,本年度は,炭酸によるセメント水和物の分解過程ならびに強酸によるセメント硬化体の分解過程について実験的検討を行った. 1.炭酸によるセメント水和物の分解過程 合成したC-S-H,フリーデル氏塩を使用して,促進炭酸化実験を行った.模擬細孔溶液として試薬のNaOHを用いてpHを13.2に調整した溶液中に,C-S-Hまたはフリーデル氏塩を投入し,C-S-HではCO_2濃度1.0%,フリーデル氏塩ではCO_2濃度0.5%,1.0%の環境下で促進炭酸化を行った.その結果,フリーデル氏塩では,CO_2濃度に関わらず時間の経過とともに炭酸化による分解が進み,試験開始後24時間でほぼすべてが分解したのに対し,C-S-Hでは,試験開始後120時間経過しても,すべては分解していない結果となった. 2.強酸によるセメント硬化体の分解過程 セメントとして普通ポルトランドセメント,混和材として高炉スラグ微粉末,フライアッシュ,シリカフユーム,細骨材として珪砂を使用し,水結合材比0.35のペースト供試体,水結合材比0.40のモルタル供試体を作製した.供試体は材齢28日または材齢56日まで水中養生後,硫酸溶液に浸漬した.浸漬溶液の硫酸濃度は溶液のpHが0.5,1,2となるよう調整した.浸漬試験の結果,高炉スラグ,フライアッシュの混和と比較して,シリカフユームの混和で,供試体の高い硫酸抵抗性が認められた.さらに,混和材の併用使用が,供試体の硫酸抵抗性の向上には極めて効果的であることが確認された.
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