研究概要 |
本研究では,石油資源探査の分野でよく発達している音波検層技術を,建設材料に空けられた小径ボアホールにおける音波計測に応用して,高い精度でコンクリートや地盤・岩盤などの建設材料の内部の評価を行おうとするものである.そのために,平成19年度は波動の順解析,逆解析,及び計測センサーの試作を行った.順解析では,2次元並びに3次元異方弾性体の動的解析のための境界要素法プログラムの開発並びに効率化を図った.異方弾性体の動的境界要素法プログラムは世界的に見ても研究例が少ない.異方弾性体に特有の放射パターンや散乱特性など,貴重な解析結果を得ることができた.ただし,解析コードの効率化については,計算時間の短縮のために並列計算などをさらに進める必要があることが課題として残っている.逆解析では,シミュレーションや実験で得られた波形群に周波数並びに時間域における線形化逆散乱解析法を適用し,材料内部の画像化を行った.通常よく用いられる開口合成法による結果との比較から,逆散乱解析は開口合成法よりもより鮮明な画像を得ることができた.また,TDTG法と呼ばれる新しい逆解析法によって音波の散乱源を高精度に画像化できることもわかった.計測センサーについては,大口径のセンサーを用いると十分なS/N比で音波を計測することができたが,小径のセンサーでは十分なS/N比が得られなかった.センサーの感度の向上については来年度の課題である.
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