研究概要 |
本研究では,石油資源探査の分野でよく発達している音波検層技術を,建設材料に空けられた小径ボアホールにおける音波計測に応用して高い精度でコンクリートや地盤・岩盤などの建設材料の内部の評価を行うことを目的として,異方弾性体における波動の順解析,逆解析などに関する基礎的な研究及び計測への応用を行ったものである.最終年度である平成20年度は,順解析において境界要素法による異方弾性体の動的解析を進めると共に,EFIT(動弾性有限積分法)を用いた非均質異方弾性体の解析を行った.解析コードの並列化を行い,計算効率の向上に努めた結果,実用上必要な大規模な解析を実行できるようになった.逆解析においては,アレイ超音波装置の利用を念頭にS-SAFT(セクター開口合成法)と逆散乱イメージング法の比較を行った.その結果,物理モデルに基づいた定式化がなされている後者の逆散乱イメージング法の方が精度の高いことを確認した.なお,今回用いた逆散乱イメージング法は高速フーリエ変換を利用した信号処理を用いており,開口合成法や通常の逆散乱解析法と比べて高速でイメージを作成することができるという特徴を有している.計測への応用に関しては,非均質異方弾性体のような複雑は波動現象が発生する材料に対しても解析による波動の逆伝搬解析から求めた遅延時間を各アレイ素子に与えることによってアレイ超音波における受信波形のS/N比を大幅に向上できることを確認した.
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