研究概要 |
本研究は,地震工ネルギーを吸収・消散する部材(制震ダンパー)を橋梁構造物内部に設置し,大地震による主構造の塑性変形を副次的な範囲に収め,損傷した部材を地震終了後に速やかに取り替える,あるいは橋梁のライフサイクルに渡って取り替え不要な制震ダンパーを設置することにより修復性向上をねらう,即ち鋼橋の制震構造化による新しい耐震補強法を開発しようとするものである.対象橋梁は,動的挙動が複雑な連続橋,トラス橋,アーチ橋,斜張橋,吊橋とする.研究の目標として,中央防災会議:首都直下地震大綱(平成17年9月27日)が推進する「1日以内に緊急車両の通行機能を確保する橋梁の耐震化」実現を目指す. 本年度は,橋梁のライフサイクル(約100年)に渡って取り替え不要な制震ダンパー(高機能制震ダンパーと称する)として,座屈拘束ブレース(BRB)の開発を目的とした実験的研究を行った.すなわち,アーチ橋を対象とした数値計算から大地震3回に耐えられる制震ダンパーを高機能制震ダンパーとみなし,BRBに要求される変形性能(軸ひずみ)は3%,累積塑性変形は70%とし,それらの性能を満たすBRBの開発研究を行った.そのために,ブレース材として100x10mmの平型鋼,拘束材として種々のウェブ高さの5種類のT形鋼を持つBRB供試体を製作して繰り返し引張り-圧縮荷重下での性能実験を行った.その結果,BRBが全体座屈しないように設計した供試体は所要の性能を満たすという重要な結果を得た.これによって,高機能座屈拘束ブレースの設計が可能となり,実用化への目処が立った.
|