研究概要 |
傾斜ケーブルのギャロッピングに対して,米国・カナダの試験では,スクルートン数(質量減衰パラメータ)を上げると,振動の発生が抑えられる結果となっているが,国内で行われた斎藤らの実験では,スクルートン数を上げても,ほとんど制振効果はない結果となっている.本研究では,スクルートン数を変化させたケーブル模型のばね支持自由振動実験を行い,斎藤らの結果と同様に,ギャロッピングの発現風速は,スクルートン数の上昇に対してほとんど変化しない結果が得られた.従って,傾斜ケーブルにおいて発生が危惧されるギャロッピングは,ダンパー等の付加減衰では制振できない可能性が考えられる.また,米国・カナダのグループは,傾斜ケーブルのギャロッピングの発生要因は,臨界レイノルズ数による効果を指摘しているが,本研究では,当研究グループが過去より指摘している通り,ケーブル後流域に形成される軸方向流れが発生要因であることを明らかとした.この軸方向流れが,カルマン渦の生成を抑えていることから,他の構造基本断面と同様にカルマン渦を抑えるとギャロッピングが発現することを指摘した.実際にどの程度の軸方向流れが存在するのかを調査するため,実橋ケーブルと同等の径の模型を用いて,軸方向流れの強さを計測した.その結果,接近流の60〜80%程度の軸方向流れが存在することが判明した.また,ケーブルの空力振動の制振対策として,通常ケーブルの他に,実際に空力的制振対策として用いられている軸方向突起付きケーブル,ヘリカルフィン付きケーブルの他に,リング付きケーブルを考案し,その耐風性を調査した.その結果,軸方向突起付きケーブル並びにリング付きケーブルは比較的耐風安定性が良く,特にリング付きケーブルにおいては,軸方向流れを弱めるだけでなく,整流板としての効果によってカルマン渦が強められ,ギャロッピング振動が抑えられていると考えられる.
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