研究概要 |
本研究の目的は土壌内におけるガスの拡散と移流に関するトランスポート・パラメタのモデル化を行うことにある.本年度は,日本国内数カ所の土壌およびデンマークの土壌について,土壌ガス拡散係数,通気係数(透水係数に相当するもので,空気の通りやすさを表す係数)を測定し,予測モデルの提案を行った.得られた結果は以下の通りである. 1)5種類のデンマークの土壌についてガス拡散係数を測定し,予測モデルの評価を行った結果,Three-Porosity Model(Moldrup,2004)の適合性が最もよいことが明らかになった.通気係数については土壌間隙径分布に基づいた新しい予測モデルを提案し,このモデルに必要な基準値(k_a,_<100>)の予測法も示した. 2)立川ローム(東京大学農場)において100mの直線上に採取した不撹乱試料について,土壌ガス拡散係数,通気係数,透水係数などを測定し,その空間分布について調べた.ガス拡散係数についてはPenman-Call Model(Moldrup,2005),通気係数についてはKawamoto Model(2006)が最適であることを示した. 3)福島ロームについては深さ方向について調べ,間隙量と有機物量が多い表層土での拡散係数が低いこと,下層土に比べて,拡散係数がゼロとなる無効間隙の値が表層土では大きいこと,通気係数には有機物量の影響は小さいことなどが明らかになった. 4)土壌ガス拡散係数,通気係数,透水係数などと,気相率や体積水分含有率との相関について統一的に適用できるBimodal Probability Law Modelを提案した. 5)構造に異方性のある粘土,泥炭土におけるトランスポート・パラメタやローム土における溶質拡散係数は現在測定中であり,現場での土壌ガス分布測定についても準備中である.
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