研究分担者 |
川上 英二 埼玉大学, 地圏科学研究センター, 教授 (50125887)
桑野 二郎 埼玉大学, 地圏科学研究センター, 教授 (30178149)
山辺 正 埼玉大学, 大学院・理工学研究科, 准教授 (40125894)
長田 昌彦 埼玉大学, 地圏科学研究センター, 准教授 (00214114)
小口 千明 埼玉大学, 地圏科学研究センター, 准教授 (20312803)
|
研究概要 |
平成19年度は,主にタジキスタンの古代シルクロードに沿って建設されたアジナテパ仏教僧院遺跡を対象として,具体的な同遺跡の修復を通して研究した。遺跡の修復に当たっては,同遺跡が世界的文化財である事から,ユネスコ及びタジキスタン文化省などと協カした。本年度の主な研究内容は,(1)遺跡材料及び修復材料の化学・鉱物学的分析と修復材料の決定,(2)写真測量による遺跡劣化プロセスの研究(3)遺跡の土構造壁面からの蒸発測定と,塩分劣化現象の解明、(4)耐震性を考慮した遺跡修復方法の提案と修復の実行、(5)僧院遺跡に残る大きなストゥーパの壁土による被覆実験,であった。蒸発計測には,平成18年度に本研究の中で開発した携帯型高精度蒸発散計測装置を用いた。またストゥーパの被覆実験では、棕櫚縄、木綿縄及び日干しレンガを用いて4種類の異なった方法で補強し、雨季の間の耐久性を調べた。 研究の結果,(1)写真測量により,遺跡の劣化プロセスが定量的に評価できる,(2)壁の崩壊形態と,蒸発量分布には良い相関があり,蒸発量の大きい所では崩壊が大きい。これは,蒸発に伴う塩類析出によるものと考えられる。(3)本遺跡の劣化がかなり急速に進む事から,耐震性も考えて,残存壁をある程度厚い日干しレンガ層と壁土層で被覆する修復法を提案し,試験施工した。(4)ストゥーパの被覆はいづれの方法も良い結果を得た。しかし,2008年初頭に降雪があり,雪に覆われると,局所的に壁土の劣化が進行する事が分かった。降雪に対する遺跡の安定生確保が今後の問題となる。 本年度の研究により,まだ研究の途中であるが,土構造物の長期安定性評価技術や,その評価に基づく修復工法の選定などが明らかとなってきた。
|