研究の目的は、液状化して有効応力を喪失した砂の大変形時の力学特性の解明であり、実際の地盤の液状化変形予測および対策工の性能評価に利用することを、計画している。既往の研究においても装置を工夫することにより、5kPa程度の低い有効応力におけるせん断実験は、実施してきた。しかし5kPaと言えば、水で飽和した砂に換算して50cm程度の土かぶりに相当し、完全に液状化して軟弱化した砂の挙動を再現した、とは言いがたい。一方、重力の作用する環境で有効応力をゼロにすることは、砂粒子に自重が存在する以上、不可能といわざるを得ない。 そこで本研究では、重力の存在しない無重力環境において、砂のせん断実験を行うことを計画している。初年度は、国内の自由落下無重力実験施設を訪問して、機器の仕様を調べ、それに適合するせん断実験装置の設計および試作を行ってきた。自由落下カプセルに搭載できる装置の寸法等には制限があり、その範囲内で目指す実験を遂行するためには、新たな試みが必要であった。特に微小な荷重を安定して載荷するために装置が議論を要した。最終的には、やわらかく長尺なバネを利用したメカニズムを採用した。また、通常の実験で試用している測定装置等が無重力環境で正常に機能するか調べるため、検定のための自由落下実験を行った。結果は満足すべきものであり、計測関係に問題が無いことを、確認した。他方、三軸せん断実験装置は設計、製作、組み立てが終わり、動作確認を完了した。 これによって次年度の実実験の準備が整った。
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