研究概要 |
当該年度の研究成果は,以下の3点にまとめられる. (a)江奈湾干潟において,小型UAVを使った航空写真撮影を行った.時刻ごとの水際線の変化を捉えることにより,きわめて平坦な干潟地盤の微地形を効率的かつ精密に把握できた.高解像度画像により底生生物の巣穴やその密度等をも捉えることができた.また,干潟土砂の堆積情報を効率的かつ高精度に得るためにMASWによる探査を行い,せん断波速度構造すなわち地盤の硬軟の分布を得た.結果はハンディ・ジオスライサーにより確認した地層の層序とも整合するものであった. (b)多種多様な規模・土質の干潟において岸沖測線に沿ったせん断波速度構造ならびに地盤高データに対してスペクトル解析を行い,卓越波長に着目して干潟の特徴を定量的に評価した.多段バー・トラフが発達した干潟ではそれに対応した波長40〜90mが卓越するのに対し,泥質干潟や広大・穏やかな干潟では卓越波長は見られない.亜熱帯干潟で地中の石灰岩が表層に突出している場合,卓越波長はその影響を強く受ける. (c)濤沸湖の湖口砂州干潟においてMASWによる探査を実施し,土砂の堆積形成史は以下のように復元できると推察された.1)湖口左岸側砂州と陸地のせん断波速度構造が類似しており,当該砂州はかつて陸続きであった.2)北側と南側の2本の澪筋の位置は長期にわたり安定していた.3)湖口砂州の形成による澪筋の閉塞や流域開発による河川流量の減少により,澪筋内に泥土が堆積するようになった.4)現在の本流となっている西側の澪筋から湖奥に向かって砂が遡上して砂州が成長している.澪筋や深い部分に堆積した泥土の上に砂が堆積する状況にある.以上の記述は,航空写真の記録や地元の方の証言とも整合するものであった.
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