研究概要 |
従来の手法の問題点を全て解消した大気・海洋・陸面結合の台風・吹送流・高潮モデルを開発し,伊勢湾を対象にこれまでの計画潮位を上回る高潮の規模とその可能性について,今後の温暖化の影響も含めて大気・海洋力学的に検討・解明を行い,現在気候における名古屋港の可能最大高潮の潮位偏差が伊勢湾台風による潮位偏差3.5mを1m上回る4.5mに達することを明らかにした.さらに,将来気候における環境場をCMIP3マルチ気候モデルデータ(高度成長シナリオSRESA1B)に基づいて設定した場合,名古屋港の可能最大高潮は6.5mに達すという驚くべき結果を得た. 1.伊勢湾直撃コースとなる大気場の設定:代表的な伊勢湾直撃台風である13号台風と伊勢湾台風来襲時の気象・海洋場の環境場中に,計画台風スキームにより作成された台風固有情報を入力し,伊勢湾への直撃コースとなる台風初期場作成法を完成させた. 2. 台風下吹送流の乱流モデルの逆解析的構築:現地に適用できるバースト層乱流モデルを逆解析的に開発し,その最適化を行った. 3.台風・海洋・波浪結合モデルに台風スキーム組み込んだ結合モデルによる台風・高潮計算の精度検証:想定台風スキームを台風・海洋・波浪結合基本モデルに組み込むことにより,台風の進路を支配する大気・海洋場を広くカバーすると同時に,台風周辺のシャープに変化する大気・海洋場の高精度計算を行い,伊勢湾台風および9426号台風の再現計算をによって精度を検証し,その有用性を実証した. 4.各シナリオの下での想定台風による高潮:3.で精度検証を行ったモデルを用い,伊勢湾の各海岸での最高潮位の分布を明らかにした.さらに,温暖化シナリオに従って海水温を上昇させた場合についても同様の計算を行い,上述の伊勢湾において起こり得る最大規模の高潮の実態を明らかにした.
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