研究概要 |
本研究では波長が数十メートル以上のメガカスプの特性を把握するために,波崎海洋研究施設(Hazaki Oceanographical Research,HORS)の位置する茨城県の波崎海岸の汀線近傍において,1987年1月〜1994年7月の期間に1ケ月に1回の大潮時に取得された地形データを用いて,D.L.+0.2mにおけるカスプの振幅η_bと波浪諸元との関係を検討した. 沿岸域の地形は荒天時には沿岸方向に一様になり,その後の静隠時に沿岸方向の変動が生ずることを考慮すると,メガカスプの振幅は,荒天時に減少し静隠時に増大すると予想される.そこで,振幅η_bは荒天時には0となり,その後は,沖波のエネルギーフラックスの累積値ΣE_fΔt(Δtは時間間隔,ここでは1日)に比例すると仮定し,η_bの推定値と実測値との誤差が最小になるように沿岸方向変動の振幅が0となる沖波エネルギーフラックスE_<f,cr>を求めた.その結果,E_<f,cr>=14.5kN/sとなり,その値を基に求なったΣE_fΔtとη_bとの関係はη_b=(ΣE_fΔt)^<0.33>となった.加藤ら(1987)は,本研究の対象である波崎海岸でほぼ毎日取得された断面データを解析し,平均汀線位置にある汀線が侵食し始めるエネルギーフラックスが約3kN/sであることを示した.このエネルギーフラックスは規則波のエネルギーフラックスの推定式によって得られており,不規則波を考慮するとこの値は約15kN/sとなる.この値は,今回得られたE_<f,cr>=14.5kN/sと非常に近い値であり,カスプが消滅するエネルギーフラックスとして14.5kN/sが妥当であることを示していると言える.なお,E_<f,cr>=14.5kN/sは,周期を10sとすると,1.77mの波高に相当する.
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