研究概要 |
本研究では,車両走行挙動に関する観測データを用いて,道路交通ネットワークが提供するサービスの質を多面的に評価し,サービスレベルの向上に向けて,どのような対応策をとるべきか診断するための総合的な診断評価システムの構築を試みてきた.車両挙動に関する観測データとしては,診断評価レベルの空間的な広がり,分析の詳細度に応じて使い分けることとなるが,基本的にはプローブカーによる車両走行データならびに交通流の画像観測データを用いてきた.20年度は,(1)交通錯綜・渋滞状態を考慮したミクロシミュレーションモデルの構築,ならびに,(2)道路交通サービス水準診断評価システム構築に関する基礎・実践的研究を行ってきた.(1)では,平成19年度に構築した交通錯綜下における車両挙動モデルを,ミクロ交通シミュレーションに組み込み,交通錯綜箇所およびその近傍における車両挙動・交通流動の詳述化を可能なシミュレーションの構築に取り組んだ.このシミュレーションモデルは,路肩の拡幅,車線運用の変更等,交通サービス水準の観点から見て小さな投資で確実な効果が得られる可能性が高い,各種の施策の効果を予測可能なシミュレーションとする.(2)では18年度から3カ年にわたる研究成果を基礎として,GUI等を整備し,道路交通サービス水準診断評価システムとしてまとめ上げてきた.この診断評価システムを,実際にプローブデータが収集されている道路ネットワークに対して適用し,所要時間信頼性に基づくサービス水準の評価,サービス水準の悪化を招く要因の特定・診断,診断結果に基づくサービス水準改善施策の立案,およびミクロシミュレーションを用いた対策案の効果予測という一連の評価・診断プロセスを実施した.
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