研究概要 |
クリプトスポリジウムについては,下水について平成16年1月から月1回のペースで調査した。全オーシスト濃度の幾何平均値は1.9個/Lであったが,3月には10個,5月には11個,8月には18個と,ピークが認められた。何らかの内部構造があったオーシスト171個について遺伝子解析を試みた。PCRで増幅が認められたのは43個(25.1%),そのうち遺伝子解析できたのは26個で,7種類の遺伝子型が検出された。遺伝子型は,C.parvum genotype1が10個(遺伝子解析ができたものの38.5%),C.parvum VF383が1個(同3.8%),C.parvum genotype2が5個(同19.2%),C.meleagridisが3個(同11.5%),C.sp.Pigが5個,C.andersoniが1個,C.genotypeW19が1個であった。 ノロウイルスについては,オゾン高度処理実験プラントで調査した。最初沈殿処理水はPEG法で,砂ろ過水,オゾン処理水,再オゾン処理水は陰電荷膜法で濃縮し,cDNAに変換したのちリアルタイムPCR法で定量した。その結果,二次処理で約310g除去され,砂ろ過ではほとんど除去されず,1回のオゾン処理で1log程度除去されるとの結果が得られた。 陰電荷膜法のウイルス回収率に及ぼす濁質の有無とろ過水量の影響を明らかにする目的で,下水二次処理水そのもの(濁度1.5度)とそのろ過水に大腸菌ファージQβを添加して評価した。その結果,ろ過水量が多くなると回収率が低下した。低下の傾向は濁度のある水の方で極めて顕著で,0.5Lろ過時の回収率81%が,1Lろ過時には6%にまで低下した。このため,自然の環境水のような濁度のある水では濃縮に伴う回収率の変化を把握しないと,分析結果の定量値としての信頼性が大きく損なわれる危険性があることが明らかになった。
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