下水のクリプトスポリジウム調査を完了した。これまでの結果をまとめると、下水のクリプトスポリジウム濃度は0.4〜73個/Lであった。2年間で単離したオーシストは1263個、そのうち内部構造の認められたオーシストは873個、PCRで遺伝子増幅が認められたのは91個、遺伝子解析できたのは79個であった。ヒト感染性の疑いがある(C. hominis、C. parvum、C. meleagirdisの3種で全体のおよそ90%を占めていた。イヌを宿主とするC.canisやネコを宿主とするC. felisも検出されたが、両者を合わせても10%程度にすぎなかった。 MilliQ水・水道水・下水・下水二次処理水の4種の試験水に大腸菌ファージQβ又はMS2を添加して直径47mm、孔径0.45μmの陰電荷膜でろ過し、ろ過水への漏出、フィルターからの回収を実験的に評価した。フィルターへの吸着率はMiiliQ水で99.99%以上、下水で99.5%以上、下水二次処理水で95%以上といずれも高かった。しかしアルカリ誘出による回収率は非常に低く、最も高いMilliQ水で28%、下水では1%以下、下水二次処理水では6%といずれも低い値を示した。MS2はQβと異なり、どの試料水の場合も陰電荷膜への吸着が低い結果となり、MilliQ水の場合でもろ過開始直後は60%でろ過の継続に伴って20〜30%にまで低下した。水道水ではろ過開始初期に50%程度あったが、ろ過継続とともに低下し1000mLろ過時には全く吸着しなくなった。下水二次処理水ではろ過開始直後で50%を下回り、100mLろ過時には全く吸着しなかった。下水ではろ過開始直後は高かったものの、下水二次処理水と同様ろ過の継続に伴って低下し、ろ過水量50mLの時点で全く吸着しなかった。フィルターからの回収はQβの場合と同様非常に低く、どの試料水の場合も1%以下であった。
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