研究課題
基盤研究(B)
平成18年度は京都府向日市水道部が管理する地下水と洪水対策工事によって掘削工事が行われている川西市の現場の地下水排水を対象に実験した。向日市及び川西市の実験現場における原水の平均砒素濃度は、向日市で19.3mg/L、川西市で218mg/Lであった。向日市では、ろ過速度を150〜600m/dayと変化させて実験を行ったが、砒素、鉄、マンガンのいずれも72〜98%の除去率を得ることができた。また、高濃度の川西市では500m/dayのろ過速度でおこない、鉄は平均75%、砒素は平均59%の除去率であったが、マンガンの除去は不安定であった。一方、SPring-8による解析では、3価砒素は当初、鉄バクテリア近傍で3価として、一部は酸化されて5価として鉄バクテリアに吸着、時間とともに3価として吸着した砒素も5価に転換することがわかった。これは今まで3価が5価に酸化されてから吸着されるという定説とは違う新しい知見を得ることができた。平成19年度は向日市で実験を継続した。前期・後期の結果では、鉄については前期・後期ともに90%を超える除去率を安定して得た。砒素については、後期は約60%と前期に比べ除去率が改善された。マンガンの除去は、前期・後期ともに除去はほとんどされなかった。アンモニア性窒素の硝化率は後期でやや改善された。これはろ材の変更、逆洗頻度の変更によるものと考えられる。カラム試験の結果では、全てのろ材において通水開始50日目までにはマンガン・アンモニア性窒素の除去・硝化が見られた。SPring-8での解析では、吸着は生の鉄バクテリアフロックに5価砒素を添加したものが一番高いことが判明した。測定結果から、生の鉄バクテリアフロックの3価砒素吸着能は凍結乾燥させた鉄バクテリアフロックの5価砒素吸着能より大きいこと、また、吸着速度も生が乾燥よりも大きいことが判明した。
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