研究概要 |
感潮域の底泥表面には生物膜が形成され,水域における様々な物質輸送に大きな影響を与えていると言われている.これまでの研究結果より,底泥の表層に生物膜層が形成されている場合には,生物膜層が形成されていない場合と比較して,底泥の巻き上げ量が低下することが明らかとなっている.しかし,底泥の深さ方向にどの程度の生物膜層が形成されているのか,また水温・光の条件によってどの程度違いが生じるのかを定量的に把握するには至っていない. (1)生物膜を形成させた条件下での巻き上げ実験:生物膜を形成させた場合には,巻き上げ量が低下する現象が確認された.また,水温に応じて巻き上げ量とせん断応力の関係に変化が表れることが確認できた. (2)生物膜形成実験:水槽内に泥(六角川で採取)を懸濁液の状態で注入し,所定の期間静置する.静置している期間中,蛍光灯で光を照射し続ける条件を明条件,そして水槽を透過率5%のカーフィルムで覆い,さらにその上からダンボールで覆い光を遮る条件を暗条件とした.また水槽にICサーモヒーターを設置し,所定の水温を保った.所定の期間静置した後に,底泥採取装置を用いて底泥を乱すことなく採取し,採取した試料を凍らせた.冷凍した底泥を,ミクロトームを用いて表層から深さ方向に1mmごとの層を切り出し,それぞれの層のクロロフィル-aの測定を行った. (1)本研究では底泥表層に形成される生物膜によって,底泥の巻き上げ量が低下することを示した.(2)底泥表層に形成される生物膜層厚は,水温に応じて変化し,水温が高いほど厚く形成された.(3)生物膜層の厚さは,水温および光の条件によって変化し,最大で7mmに達することがわかった.
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