研究概要 |
これまで,柔らかい底泥の巻き上げおよび浸食速度については大坪・村岡,凝集性の強い底泥の巻き上げについては,海田らによって明らかにされており,これらの論文中で定式化された予測式を用いて,底泥の巻き上げ量の算出が可能となっている.しかしながら,実際の水域に存在する底泥は,表層部分に生物膜を形成している場合や表層部分のごく薄い層を除く下層の部分は圧密作用を受けて硬くなっている場合(含水比が100〜200%程度)がほとんどである.これまでの室内実験では,実験装置の設定限界から柔らかい底泥を巻き上げることは可能であったが,含水比が200%以下のいわゆる硬い底泥を巻き上げ可能なせん断応力は発生させることが不可能であった.このため,洪水フラッシュによってどの程度の底泥が巻き上げられ,河床の浸食速度がどの程度であるかを検証した結果としては,横山らによる現地観測結果が見られる程度である.また,通常流れ場における巻き上げ現象でも生物膜の影響は考慮されてこなかった.そこで,本年度の研究では,昨年度に引き続き洪水フラッシュ時のせん断応力が発生可能な大型円形回転水路を用いて,固い底泥の巻き上げおよび浸食速度に関して実験的な検討を行い,洪水フラッシュ時における底泥の巻き上げ量および浸食速度に関する予測に用いることが可能なデータを室内実験により求めその結果より定式化を行った.また,生物膜が巻き上げ現象に与える影響を明らかにすることを目的として研究を行った結果より,生物膜が底泥の巻き上げに与える影響を生物膜の厚さで評価することができ,定式化することができた.
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