本研究では、Microcystisなどの有害藻類の諸特性や産生毒素を簡単・迅速に測定するための計測システムとして、酵素アッセイによる低コスト化毒素モニタリング法、藻類の迅速増殖測定システム、藻類細胞の迅速活性測定のためのマイクロデバイスを開発することを目標として研究を行い、次の成果を得た。 ミクロキスティンの脱リン酸化酵素阻害アッセイ法(PP2A法)の低コスト化のために、PC用の汎用スキャナーを用いた簡易定量手法について試験した。その結果、96穴のブラックプレートを用い、スキャンしたRGB情報の多変量回帰分析結果を吸光度測定の代わりに用いることができ、八郎湖での有毒アオコのミクロキスティンを測定できた。さらに市販のELISAキット(ミクロキスティン測定用)のためのプレートスキャナーとしてもPC用スキャナーが利用できた。また、これら簡易手法が国内や東南アジアなどにおける研究や現場測定への適用についても検討した。さらに専用の藻類増殖チャンバー(旋回培養と無菌的通気可能)試作し、このスキャナーでの藻類増殖量の定量化(RGBデータ)に成功した。昨年度までに試作した藻類の回転培養型の自動連続増殖測定装置については、引き続き改良と測定試験を継続した。 昨年度に試作した藻類の単一細胞活性測定のためのマイクロ流路デバイスを用いて、培養したミクロキスティスの光合成速度を定量化した。その結果、細胞数と酸素還元電流(酸素発生速度)は比例し、この比例係数から藍藻ミクロキスティスの単一細胞の光合成時には、約1pAの酸素還元電流がバックグラウンド電流から増加することが明らかとなった。本システムを基礎として、培養なしでの藻類の光合成活性測定法の実用化が可能なことが解った。
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