研究概要 |
初年度であり,まずワイヤレス・センサ・ネットワークのノードとなるセンサモジュールの開発を行った。今年度、開発したセンサは,サイズ30mmx40mmの基盤上に半導体センサ,リアルタイム・クロック,記録装置ボタン型電池を配置し微弱無線用アンテナをつけたモジュールである。開発したモジュールの数は10である。まず,ワイヤレス機能をはずし,有線の常時微動測定器の結果と比較することによりセンサ性能の確認を実施した。同じ振動台上に二つのセンサを設置して計測したところ,両者の結果はほとんど同じ値を示し,半導体センサの性能は問題ないことを確認した。次に,ワイヤレス機能の性能実験を行い,野外における通信可能距離はほぼ10m,サンプリング周波数は約50Hzであることを確認した。また,リアルタイム・クロックを用いたセンサ間の同期も機能することを確認した。ただし,半導体センサの分解能は1gal程度と粗く,安全性にかかわる地震動計測は特に問題ないものの,快適性にかかわる環境振動になると0.1-0.01galの分解能はほしいところなので,より高感度の半導体センサを搭載する必要があることも明らかになった。しかし,高感度の半導体センサの開発は国内外を含め遅れており,今後,既存センサの小型化・ワイヤレス化を狙うか,あくまで半導体センサにこだわるかの方針を選択すべき状況になっている。 次に,開発したセンサモジュールを用いて,通常時の広域振動モニタリングを中心に,ワイヤレス・センサ・ネットワークの性能確認を実施した。開発したモジュールは,環境振動測定には分解能が低いという問題はあるが,今回は,環境振動の中でも振動レベルの高い電車軌道周辺の振動測定と橋梁上での自動車通過に伴う振動測定を実施し,実環境の中でワイヤレス・センサ・ネットワークが機能しうるかどうかの確認を行った。複数のセンサモジュールからワイヤレスで転送された時系列データ及びそのスペクトル解析の結果から,ネットワーク計測により軌道からの距離による鉄道の上り線と下り線の影響の違い,橋梁と自動車の振動数の分離などが検討できることが確認された。ただし,ノイズ混入による転送時間の伸びや冬季の夜間など寒冷時に計測を行うと電池の寿命が極端に短くなるという問題点が明らかになった。 次年度からは,比較的頻度の高い震度1〜2の地震動の計測を屋内と屋外で実施する予定にしており,そのための準備も行った。大量のデータを計測する振動計測においては,現在の微弱無線ではデータ転送距離が短く転送時間も長くなるという問題を抱えており,今後ZigBee方式のデータ転送も視野に入れている。また,地震動を対象とする場合は,上部構造と基礎構造の局所的な損傷を直接検出することも必要であり,振動モニタリングを補完するセンサシステムの導入も考慮中である。
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