研究概要 |
昨年度は広域振動評測のためにワイヤレス・センサ・ネットワーク(精度1ガル)を開発したが,本年度の前半はこれを用いて建物内外でのテスト計測を実施した。建物内部におけるテストは,武蔵工業大学建築学科棟(RC造4階)で実施し,各階に2個づつ設置した計8個のセンサ・モジュールにより発生頻度の高い震度1〜2の地震動の計測に基づき建物のヘルスモニタリングの基本情報となる動特性推定を行った。一方,建物外部におけるテストは,計10個のセンサ・モジュールを配置して,多摩川に架かる丸子橋において自動車振動計測と大井町線沿線での鉄道振動計測を実施し,計測点間のデータ相関を検討した。こうした計測テストを通して,震度1〜2の地震動や環境振動のような微小振動に関しては,強震動計測では有効な精度1ガルのセンサ・モジュールでは不十分であることがわかり,精度0.1ガルの高精度センサ開発の必要性を迫られた。同時に,ワイヤレス通信が輻輳する都市域においては,とくに建物間のデータ搬送の際,微弱無線では中継基地の数が膨大になって効率が落ち,より長距離のデータ搬送が可能となる送信方式を採用する必要性が生じた。そこで,本年度の後半は,新たに精度0.1ガルのセンサ・モジュール20個を開発するとともに,データ搬送方式は,建物内部は微弱無線のままとし,建物外部はJIGBEE無線を採用することにより,建物内外でデータ搬送方式を使い分ける準備を行った。 こうした本年度の実績と経験は次年度(平成20年度)の広域振動モニタリングに引き継がれる。本年度中に品川区の戸越銀座近辺をワイヤレス・センサ・ネットワークのパイロット地区に選定し,地震動と環境振動に対する振動モニタリングを実施する計画を立案した。戸越銀座地区は近くに新幹線,私鉄,地下鉄,国道など交通振動の発生源が多く,環境振動モニタリングの対象地区として好ましい条件を備えている。同時計測データの相関分析に基づき,戸越銀座地区の微弱地震動と環境振動の広域振動特性を検討して,ワイヤレス・センサ・ネットワーク構築への今後の課題を整理する予定である。また,本年度実施した武蔵工業大学建築学科棟における震度1〜2の地震動の計測も新型センサに切り替えて継続的に実施する予定である。
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