医療施設における臭気対策を検討していく上で必要な基礎データとして、病室の通常の臭気レベルとおむつ交換時のように特定時に発生する排溝物臭の発生量、臭気特性を検討した。また、おむつ交換時に関しては、その時に発生する臭気の病室内における拡散挙動をにおいセンサーを用いて検討した。その結果、次の知見が得られた。 (1)排渡物の臭気濃度は、排泄物量、食事の形状と摂取方法、治療内容により変化したが、74〜23000と個体差があった。 (2)高齢患者の排泄物は硫化水素と脂肪酸類の検出が多く、成入男子はメチルメルカプタンの検出が多かった。 (3)排泄物自体の臭気成分のうち、メチルメルカプタン、イソ吉草酸がにおいの感じ方に影響を与えていることが明らかとなった。 (4)通常病室とおむつ交換時病室の臭気レベルは、臭気濃度は31と同等であったが、臭気強度、不快度ではおむつ交換時病室が有意に高くなり、非容認率も100%であった。おむつ交換直後の臭気が病室内に長時間残留している可能性が示唆された。 (5)通常病室とおむつ交換時病室の臭気成分濃度では、おむつ交換時に特に高くなる物質は検出されなかった。いずれもメチルメルカプタンが閾希釈倍数で20〜25、アセトアルデヒドが閾希釈倍数で15〜20程度であった。 (6)おむつ交換時に発生する臭気の拡散挙動は、主に臭気発生源近くの中間点から拡がっていき、その拡散速度は速いが、条件により一定時間経過後も臭気がベッド周辺へ滞留している場合があることが明らかとなった。
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