研究課題
本年度前期では、音/聴覚と空間の相関について、物理、音響工学、文化性、歴史性、地域性、聴覚心理学、サウンドスケープ、音楽、舞台空間・劇場空間の観点から、主に文献、資料等からの情報収集による基礎的サーベイを行った。この基礎的サーベイによる調査結果を2006年12月にイメージブックとしてまとめ、共同研究者間の中間報告書とした。また、2007年2月に研究代表者と共同研究者による中間ミーティングを行い、基礎的サーベイを踏まえ、今後の研究の方向性について議論した。こうした基礎的調査を経て、歴史的、文化的、地域的文脈における一つの特異点的な興味深いサンプルとして、和歌山県新宮市の熊野本宮大社、およびギリシャ共和国のデルフィ、メテオラ、カランバカ、アテネ、クレタ・クノッソスにおける歴史的遺跡および周辺街路において、音環境調査、実測調査、空間フィールド・ワークを行った。空間フィールド・ワークでは、建築や都市における音環境のレコーディングといった客観的調査の他に、東京芸術大学大学院生を中心とした各被験者が音環境の主観的記録する調査を行った。この調査は、様々な文脈におけるヒューマン・スケールな空間での音環境の知覚において、どのようなことが重要であるか、また、建築、都市空間における音/聴覚の傾向を明らかにすることを企図しており、空間フィールド・ワークの調査結果を基に、来年度において、研究目的である音/聴覚を主眼においた空間設計手法の確立を目指している。