都市計画法、建築基準法集団規定を中心とする都市計画・まちづくりに関する法制度の前提にあるのは、開発行為や建築行為に対する制限は事前に明示すべきという考え方である。しかし特にわが国のように土地利用が流動的な市街地では環境のあり方も変化していくので、制限を100%事前に明示するという考え方には限界がある。 そこで地域のルールは極力具体的に示しつつも、ある局面においては開発者と行政の協議調整を経ることによって開発行為の内容を決定する「協議調整型ルール」の導入が有効と考えられる。しかしその導入には時に開発者側にとって過度な権利制限として働くこともあり得るため、それを避けるための仕組みもまた不可欠である。 そこで本研究では、我が国の都市計画・建築規制における「協議調整型ルール」の具体的制度設計に向け、諸外国および我が国における「協議調整型ルール」の運用を特に不服申立制度に焦点をあてて実態把握し、それらを比較分析することによって、公平な裁定システムとしての不服申し立て制度の必要条件と、それを踏まえた上での、我が国の実態に即した協議調整型ルールの具体的な制度提言を行うことを目的とするものである。 最終年度にあたる平成20年度は、我が国の不服申立制度の判断者たる建築審査会の建築・都市計画専門委員に対し、審査会および審査請求の運用実態と意見のアンケート調査を行った。加えて前年度に引き続き、開発に対して協議調整プロセスを義務づけるまちづくり条例の存在について調査分析を行った。これらの知見をまとめ、本年度までの研究の総括として、協議調整型ルール確立のための不服申し立て制度の要件を考察した。
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