本研究は、打開策の見えない地方都市中心市街地の活性化に向けて、これまで定性的には言及されるものの、その実態が十分に解明されていない固定資産税と駐車場という2つの視点を両輪と位置づけて、都市経営の視点からこの問題点を指摘し解決策を提示することを目標としている。 まず【視点:1地方都市財政の視点から見た市街地整備による固定資産税の制御】は、近年の地価下落と今後の人口減少により、郊外部での宅地供給により税収の増加をねらっても、逆に地域全体の地価の下落によって税収が落ち込む結果となっていることから、長岡市を対象として適切な市街地整備や宅地供給が固定資産税収に結びつく仕組みを解明することを目的とする。 一方、地方都市では郊外部で増える大型店に消費者が群がり、公共施設が市民の要望で郊外に移転している。中心市街地の衰退は、中心市街地内に駐車場がないことが原因だとも言われているが、我々の研究によって長岡市の中心市街地では小規模な駐車場が急激に増加していることが定量的に分かっている。そこで【視点:2中心市街地で増加する平面駐車場の制御】は、全国17市での調査・分析から、駐車場の立地や収容台数、利用料金の適正化と駐車場の集約化による低未利用地解消をめざした、駐車場のマネージメント施策を検討することを目的とする。 そこで、それぞれの視点について本年度は初年度につきデータベースの構築等、研究の下地となる作業を行った。まず視点1については、長岡市の固定資産税収入の推移、地区別の土地家屋評価データを入手して、データベース化を行った。平成8年から平成18年のうち8年分のデータがあり、これまで評価額の見直しが行われた5時点を全て含んでいるため、様々な視点で分析が可能となった。一部であるが研究の結果、中心市街地の主要な地区である阪之上地区の税収は平成12年度まで最も高かったが、評価額の下落により平成18年度は31地区中8位にまで低下していた。中心市街地の整備の必要性が確認された。次年度はさらに市街地整備と税収の関係を分析する予定である。 次に視点2については、17市の1970DID内に存在する月極等の駐車場をゼンリンのZmapを用いて把握した。現在は入力が12市で完了し、残る5市は次年度に作業する予定である。また、長岡市を事例として月極駐車場の利用実態について把握した。現時点では96.6%の契約率であり、非常に高い結果となった。 研究成果の公表として、視点2に関する論文を日本都市計画学会に平成19年5月に投稿しており、審査に合格すれば11月に発表する予定である。
|