"電子線励起X線ホログラフィー"の高速測定ソフトの試作を行った。各角度毎に静止してスペクトルを検出するスッテプスキャンでは、十分な角度範囲でホログラムを測定するのに5時間程度必要としてものが、連続スキャンを採用することにより、90分程度で測定できるようになった。これまで、本研究は、走査電子顕微鏡を用いて行われてきたが、新たにRHEED用の電子銃を購入し、より、大電流の電子ビームを比較的大きな面積に照射することにより、短時間で微量な元素のホログラムパターンを測定するための装置の試作を行った。また、放射光実験施設にいて、X線ホログラフィーの実験も行った。まず、混晶系物質において、"長年解決されなかった課題"である、相反する現象のポーリング則とベガート則の両者を結びつけるモデルを構築するための実験結果が得られ、局所的な格子歪を引き起こす原子配置を求めることができた。本研究は、SiGeなど、その格子歪みが機能性発現に大きく関わるとされている材料の物性一機能相関の理解に大きく貢献すると考えられる。さらに、形状記憶合金が熱することによって元の形状に戻るという現象は、マルテンサイト変態が関与している。変態温度の前後でホログラムを測定し、その原子像を比較することにより、冷却により約8A程度の原子振動の凍結したクラスターが形成されていることが判明した。そして、このクラスターの生成が、マルテンサイト変態を起こす引き金になることが示唆された。このような微細組織構造の生成が明らかになり、相変態のメカニズムに迫った画期的な研究成果である。
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