研究課題
中間平衡相σが析出した2000系A1-Cu-Mgアルミニウム合金(A2014-T6)の約1μm直径の試料にコヒーレントX線回折顕微鏡法を適用し、合金試料内部構造のイメージングの可能性について検討した。測定は、スプリング8のBL29XULで実施した。また、試料の3次元形状を結像するために、入射光に直交する水平軸周りで±70°の範囲で5°の間隔で回転し、コヒーレントX線回折パターン(スペックルパターン)を合計70個測定した。その結果、透過像については十分な分解能で、試料内部の電子密度差及び試料厚さを反映したコントラストを得ることができた。さらに、これらすべてのプロファイルを満足するように試料内部の電子密度の3次元分布を結像させることに成功した。このような金属内部の析出物の可視化は、世界ではじめての試みである。得られた内部構造の妥当性を議論する目的で、同じ試料を電子顕微鏡で観察した。その結果、次のような点が明らかになった。試料中の析出物が示す板状の形状はX線回折顕微鏡でも再現できたが、実際よりかなりぼやけた形状しか再生することができなかった。これは、入射X線強度などの制約から現状ではX線回折顕微鏡の分解能は数10nmであり、測定された電子密度分布のコントラストが100nmのオーダーまで広がったためと考えられる。この研究結果を踏まえ、来年度は形状が単純で、かつ電子密度分布がサブミクロン程度の試料について、同様の測定を行いX線回折顕微鏡の測定技術についてさらに研究を進めたい。また、現状のX線回折顕微鏡が抱える大きな問題の1つである試料の形状に関する制約を回避するための方策についても検討したい。
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APPLIED PHYSICS LETTERS 90(18)
ページ: Art.No.184105
SPring-8 Research Frontier 2007