研究概要 |
結晶中の転位像は,原理的に回折に依存した観察であることは言うまでもなく,そのトモグラフ観察は現在,研究途上にある.しかし,そのコントラストが試料傾斜によって大きく変化しないこと,換言すれば,試料傾斜による回折コントラストの変化を押さえ込む回折条件設定・維持が出来れば,観察は可能となることが期待される.これは基本的に電子線干渉のダイナミカルな効果を押さえる弱ビーム条件を駆使する一方で,回折ベクトルを試料回転軸と一致させることで,試料傾斜に際して回折ベクトルを保持し,バーガースベクトルと回折ベクトルとの角度関係を一定に保っことにより達成できる.そこで,本年度は,まず当グループがこれまで使用してきたSi結晶を用いて,3次元電子線トモグラフィーに関して,シンプルな転位構造について観察を行い,手法の問題点を洗い出し,三次元構成像の信頼性の確立を行った.これまで,当グループでは,亀裂先端近傍の透過電顕試料作成法として,試料を選択的に薄膜化できる集束イオンビーム法(FIB)を用いてきたが,これに加えイオンミリング法による試料作成方法を確立し,亀裂先端転位群の立体構造解析に適する電顕試料作成方法を確立した.また,英国Cambridge大学P.A.Midgley博士協力の下,Si単結晶ウェハー中に析出しているBMD(Bulk-micro-defect)とそれに絡まる転位群の三次元像構築のために,試料を試料ホルダー内で-60〜+60の範囲で小刻みに回転し,これらの透過電子顕微鏡観察を行った.
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