研究概要 |
最終年度は,バルクフッ化リチウム(LiF)のF_3^+センターに基づく緑色スペクトル領域ならびにF_2センターに基づく赤色スペクトル領域での分布帰還型(DFB)カラーセンターレーザーの同時発振の開発を実施した.そのため,これまで別々の工程で実現してきた2波長領域でのDFB発振を一連の工程で実現する新たな方法の提案と実証を試みた.具体的な工程は以下の通りである. 1. 干渉したフェムト秒(fs)レーザーからの基本波(780nm)および第2高調波(390nm),パルス幅130fsのパルスをそれぞれの波長領域でブラッグ条件を満たす間隔の周期構造をLiFサンプル(大きさ15×10×2mm^3)の結晶表面下100μm,長さ15mmに亘り書き込んだ. 2. 大阪府立大学・放射線総合科学研究センターの協力の下,上記手法で書き込んだ周期構造を有するサンプルを200Kに冷却しながらエネルギー500keVの電子線照射を行い,レーザー発振に十分な濃度10^<17>個/cm^3程度のF_3^+センターだけを,競合するF_2センターを抑圧しながら形成した. 3. 緑色スペクトル領域で発振するF_3^+センターDFBレーザー発振はこのままの状態で4の工程を実施した.一方,赤色スペクトル領域で発振するF_2センターDFBレーザー発振は,引き続き473Kで30分間の異なる熱処理を経てF_3^+からF_2センターへのセンター変換を行った. 4. OPO(Optical Parametric Oscillator)レーザーからのナノ秒パルス(波長460nm,繰り返し周波数1Hz,エネルギー1mJ程度)で両者のサンプルを横励起配置で線状に集光した. 5. F_2センターに基づく二種類の間隔〜502,510nmの周期構造を書き込んだサンプルからの赤色DFBレーザー発振(発振波長698.0,710.6nm,スペクトル幅〜0.1 nm)と一種類の間隔〜380nmの周期構造を書き込んだサンプルからのF_3^+センターに基づく緑色DFBレーザー発振(発振波長536.6nm,スペクトル幅〜0.5nm)の室温DFB発振を実現した.傾斜効率は赤色発振で〜10%,緑色で〜4%,ビーム発散角〜20mradが得られた.励起閾値エネルギーは緑,赤色領域のDFBレーザー発振においてほぼ同じ0.8mJであった.
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