研究概要 |
(1)インデンターの高機能化:世界唯一の計測システムであり,高機能化を目指し,圧子接触面積Acをナノ領域で高精度計測するための光学系に関する改良を行った。これによりAcの読み取り精度を±100nmまで高めることができ,サブナノ領域における圧子力学解析が可能となった。 (2)弾塑性薄膜の圧子力学に関する理論解析と実験検証:(a)有限要素法を用いた理論構築;弾塑性構成方程式の不備により,従来不可能であった硬度の基板効果依存性を理論的に予測する解析手法の構築を行った。有限要素解析には汎用のANSYSを用いた。基板効果を組み込み,かつ圧子直下の応力歪み場を定量表現するために,新たな概念として,空間依存性を有する弾性率ならびに降伏強度を定義し,これらのパラメータを有限要素解析により確定した。またこれらのパラメータの解析解に関する理論考察を行い,硬度の基板効果依存性を理論的に予測する解析手法を確立した。(b)実験検証;これらの理論研究成果を検証するため,上記顕微インデンターを用い,MeSO_<3/2>薄膜を用いた実験的検証を行った。 (3)粘弾性体の圧子力学に関する実験:粘弾性薄膜の解析に先立ち,バルク粘弾性体の圧子力学研究で懸案となっている,圧子接触面積Acの時間依存性を定量評価するため,顕微インデンターを用いた実験を行った。当研究で開発した顕微インデンターによってのみ,懸案課題である接触面積の時間依存性の実験的な定量化が可能である。PhSiO_<3/2>厚膜の応力緩和試験を行い,Acの時間依存性を定量解析した。粘弾性基板効果の定量は次年度に行う。 (4)ハイブリッド膜のマイクロパターニングに着目したレオロジー:光感応性ハイブリッド膜の製造条件と膜構造および膜物性を関連付けるための圧子力学実験を開始した。
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