平成18年度は、酸化物にサブミクロンオーダーの多孔構造を形成し、光を強く散乱する構造体を構築することを目標に、スピノーダル分解を伴うゾル-ゲル反応により、Al_2O_3、TiO_2、ZrO_2などの高屈折率酸化物にサブミクロンオーダーの多孔構造を形成し、光を強く散乱する構造体の構築を試みた。特に、出発組成・反応温度の組み合わせ・熱処理により、得られる多孔構造がどのような影響を受けるかを詳細に評価し、サブミクロン空間を正確に制御できる合成条件を確率することが課題であった。また、作製した多孔体の光散乱強度を評価するため、可視域のレーザーを光源とするコヒーレント後方散乱測定系と超短パルスレーザーを光源とする光の拡散定数評価系を構築した。得られた結果と現在の進捗状況を以下にまとめる。 (1)相分離を伴うゾル-ゲル法によりSiO_2系ではマクロ多孔体を合成することができることが知られていたが、その他の遷移金属のアルコキシドは反応性が高いため、相分離による構造制御を行うことは通常困難であった。出発組成や出発物質を選択することにより反応性を制御し、Al_2O_3、TiO_2、ZrO_2などの単一成分の酸化物だけでなくY_3Al_5O_<12>やMgAl_2O_4などの複酸化物においても、マクロ多孔構造形成が可能であることがわかった。 (2)強く光を散乱する系では、後方散乱光の角度依存性が大きくなり、コヒーレント後方散乱ピークの幅が広くなるが、既存の方法ではこれを精度よく測定できなかった。光学系を設計・自作し強い光散乱の系で光の平均自由行程を正確に評価できる光学系を構築した。加えて、800nmのフェムト秒レーザーパルスとストリークカメラの組み合わせにより、シリカ系において光の拡散定数を評価できることを確認した。
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