相分離(スピノーダル分解)を伴うゾルーゲル反応により、Al_2O_3、TiO_2、ZrO_2などの高屈折率酸化物にサブミクロンオーダーの多孔構造を形成し、光を強く散乱する構造体の構築を試みた。また、可視域の連続波レーザーを光源とするコヒーレント後方散乱測定系と超短パルスレーザーを光源とする時間分解透過測定系を構築し、作製した多孔体の光の平均自由行程と拡散輸送特性を評価した。得られた成果は以下の2つにまとめられる。 (1)これまでスピノーダル分解を伴うゾルーゲル法によりSiO_2系ではマクロ多孔体を合成することができることが知られていたが、他の金属酸化物においては、前駆体のアルコキシドの反応性が高いため、スピノーダル分解による構造制御を行うことは通常困難であった。出発組成や出発物質を選択することにより反応性を制御し、Al_2O_3、TiO_2、ZrO_2などの単一成分の酸化物だけでなくY_3Al_5O_<12>やMgAl_2O_4などの複酸化物においても、マクロ多孔構造形成が可能であることがわかった。特に、TiO_2系においては、100nm〜10μmの広範囲でマクロ孔径の制御が実現した。 (2)強く光を散乱する系では、後方散乱光の角度依存性が大きくなり、コヒーレント後方散乱ピークの幅が広くなるが、既存の方法ではこれを精度よく測定できなかった。光学系を設計・自作し強い光散乱の系で光の平均自由行程を正確に評価できる光学系を構築した。加えて、フェムト秒レーザーパルスとストリークカメラの組み合わせにより、光の拡散定数を精度よく評価できることを確認した。TiO_2系においては、マクロ孔径により光の平均自由行程を系統的に制御できることがわかり、条件によっては、光の波長よりも短くなることが明らかになった。このような光を強く散乱する系の時間分解透過プロファイルを解析すると、光の局在化の傾向が観察され、アンダーソン局在への相転移の兆候が見られた。
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