(目的)マグネシウム合金を変形すると頻繁に観察される{1012}双晶は、引張方向に対して負のひずみを発生するため、変形双晶の形成原因、および変形に及ぼす役割が不明である。18年度は{1012}変形双晶に着目して、その形成原因と変形に及ぼす役割を明らかにすることを目的として研究を行った。 (方法)AZ31(Mg-3wt.%Al-1wt.%Zn)合金圧延板を供試材として、室温で引張試験を行い、{1012}変形双晶の面積率を求めた。また、双晶が形成されている結晶粒のEBSP解析を行って双晶と母相の<0001>極の分布を求めた。さらに、同じ結晶粒において転位の底面すべりのシュミット因子を求め、双晶形成傾向との対応関係を調べた。 (結果)双晶形成されている結晶粒では底面すべりのシュミット因子が大きいほど双晶面積率が大きいことが判明した。このことは、c軸が傾斜しており底面すべりが周囲の結晶粒と比較して容易である場合に双晶が形成されることを意味する。よって、双晶形成機構として、c軸が傾斜した結晶粒が優先的に変形することによって周囲の結晶粒とのひずみの不一致が発生し、このひずみ不一致を調整するために、双晶が形成されると仮定した。このモデルをを立証するために、隣接する結晶粒において転位の底面すべり変形によるひずみテンソルの不一致成分を計算し、双晶形成によるひずみテンソルと比較した。その結果、双晶形成の原因は隣接する結晶粒間のひずみの静水圧成分の不一致によるものであり、双晶が変形に及ぼす役割はこの不一致を調整することによって試料全体が均一変形することに寄与するものである、ことが明らかになった。
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