AZ31マグネシウム合金を室温において引張変形し、破断にいたるまでの種々の変形量における試料の表面組織および下部組織を観察した。変形初期においてはレンズ状の形態を有する{1012}双晶が形成された。変形量の増加にともなって、細いバンド状の双晶が形成された。これらの双晶と表面起伏の関係を調べたところ、レンズ状双晶では起伏が見られないが、バンド状双晶では顕著な表面起伏が形成されていることがあった。さらに変形することによって微細なクラックが形成され、表面起伏を形成するバンド状双晶との組織学的関連性が見られた。表面起伏が観察された部分を収束イオンビーム(FIB)装置を用いて加工して断面TEM試料を作製し、微細組織を観察するとともに、形成されている双晶タイプを決定した。20個の表面起伏全てにおいて、起伏下部には{1011}-{1012}二重双晶が観察された。この他の双晶タイプとしては、{1011}や{1013}なども観察されたが、二重双晶以外の双晶は表面起伏を伴わないことが明らかになった。二重双晶が表面起伏を形成する原因は、二重双晶内部の容易すべり面である(0001)面における転位すべりの分解せん断応力が大きくなり、双晶内部における局所的大変形が生じたためであると考えられる。実際に、二重双晶内部は多くの亜結晶粒の存在が確認され、双晶内部における活発な転位の活動を示していた。二重双晶が形成される原因としては、{1011}双晶の形成によって発生するせん断ひずみの方向と大きさが、{1012}双晶のそれとほぼ逆方向で同じ大きさであるため、二重双晶とすることで双晶形成にともなうせん断ひずみを小さくできることが挙げられる。二重双晶内部の局所変形がもたらす表面起伏は、クラック形成の原因となり、しいては試料の破断にいたる。よって二重双晶の形成を防止することがマグネシウムの延性を向上するうえで必須事項である。
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