圧延したマグネシウム合金を室温で変形し、破断面近傍に形成された組織の観察ならびに結晶学的解析を行った。これまでの研究で{1011}-{1012}二重双晶内部で大変形が生じて表面起伏を形成し、クラック形成しいては破壊に到るという推論をたてた。まず、この点に着目して表面起伏下部の双晶を数多く解析したところ、ただ一つの組み合わせの二重双晶バリアントだけが表面起伏を形成することがわかった。この双晶は双晶せん断方向が同じ面内にあり、その面が引張方向に対してほぼ平行になっているものであると特定できた。次に、クラック両側の組織観察を行い、二重双晶のどの箇所がクラック形成になるのかを調べた。その結果、両側に同じタイプの二重双晶が観察され、クラック近傍は50nm程度の微細粒から成っていた。これらのことから、二重双晶内部では予想どおり大変形が生じており、その結果、動的再結晶によって微細粒が形成されて粒界すべりが容易になり破壊に到ることが明らかになった。さらに、破断面の種々の組織形態に着目して下部組織の観察を行った。その結果、クラック起点であると思われるせん断領域、脆性破壊進展経路と思われるファセット領域、延性破壊領域と思われるディンプル領域に分類できた。せん断領域下部には二重双晶があり、大変形による破壊起点であることを確認した。ファセット領域下部には{1012}双晶が存在し、双晶界面が脆性破壊経路になることがわかった。またディンプル領域下部は通常の変形組織であった。以上のことから、破壊起点は単一バリアントの二重双晶であり、進展経路としては{1012}界面が脆性破面を形成し、他の部分が延性破面を形成して破壊に到ることが明らかになった。
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