平成19年度に広い過冷却液体領域を有するZr-Al-Ni-Cu系金属ガラスをリング状の多孔質基材上に温間圧延加工法を用いて接合し、その水素透過性を測ったところ良好な水素透過性を示すことが分かったことから、平成20年度には、金属ガラス水素分離膜の表面コーティング材に第一の主眼を置き、Ni-Nb-Ta-Zr-Co水素分離膜に対する表面コーティング種の影響を調べる目的で、PdおよびNiによる表面コーティングを行い、その水素透過性を比較した。その結果、膜の両面ともPdコーティングを施した試料と両面ともNiコーティングを施した試料を比較すると、Pdコーティングを施した試料の方が水素透過係数はおよそ一桁高い結果となった。これはNiはPdと同程度の水素解離活性があると思われるが、Ni表面層中の水素濃度がPdほど上昇せず分離膜内に大きな水素濃度勾配がつかないことが原因の一つと考えられる。また、膜の上流側と下流側とにそれぞれ異なる元素のコーティングを施した場合の各試料の水素透過係数の比較から、水素透過に対して表面コーティング材料の特性として最も重要なものは表面からの吸着→脱離エネルギーであり、脱離エネルギーが出来るだけ小さいコーティング材料が水素透過性の向上に有効であると考えられる。さらに本研究では第二の主眼として、温間ロール圧延によって作製した金属ガラス-多孔質基材複合材料を用いてメタノール水蒸気改質による水素製造実験の研究を行った。
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