前年度に引き続き、電気からカヘの高効率でエネルギー変換を可能にすると期待されている強磁性形状記憶合金効果の微視的メカニズムの解明を目指して電子状態を実験的に研究した。即ち、強磁性形状記憶合金の電子状態を光電子分光及び軟X線磁気円二色性を用いて実験的に明らかにした。さらに関連して、強磁性形状効果と同様に1次の磁気転移に起因する磁気熱量効果を示す物質についても解明を始めた。なかでも、磁気熱量効果を示す金属的化合物Mn_<2.97>Co_<0.03>GaCにおいて、1次相転移の前後における電子状態の変化を光電子分光を用いて始めて明らかにした。この結果は電子状態の第一原理計算の結果とも矛盾しないことも併せて明らかにした。磁気熱量効果は、温室効果ガスを用いない冷却技術として最重要視されている磁気冷凍技術の中核を支える物理現象である。したがって、昨年度までに得られた成果と併せて、1次転移における電子状態変化の観測の成功は、エネルギー問題および環境問題の解決に役立つ可能性のある「機能]の微視的メカニズムを、電子状態の実験的解明によって明らかにできることを実際に示したものといえる。さらに、電子状態の第一原理計算の妥当性を検証したことは、物質の機能を予測するために電子状態の第一原理計算を利用する「計算機マテリアルデザイン」の実現性を支持するものといえる。
|