研究概要 |
18年度は反応性スパタリング法によりシリコン基板上に中性子散乱測定用の誘導磁気異方性の大きさの異なるCo-Pd-Si-O膜を作成し、Mo特性X線に最適化したラボラトリX線小角散乱および偏極中性子小角散乱測定を行なった。この結果、化学的な粒子は計画通り、粒径およそ3nmのCo粒子が高密度で分布し、軟磁気特性が得られていることが確認された。この試料の磁区構造の外部磁場による変化を検討したところ、大きな異方性磁界を示した試料では磁化方向から期待される方向(磁場に垂直な方向)とは90°ずれた方向に散乱強度の極大が観測された。この極大方向は誘導磁気異方性より小さな磁場では磁場強度の増加に伴い回転することがわかった。このことは磁区構造よりもはるかに小さなスケール領域に平均磁化方向からのゆらぎが存在していることを示している。このような、局所磁化のゆらぎは通常の軟磁性材料ではこれまで観測されておらず、ナノグラニュラ固有の特徴である可能性が高い。この結果について2006年の小角散乱国際会議(京都)で発表した。今年度は金属系の軟磁性体や回転磁界中で熱処理を行なって誘導磁気異方性を小さくした試料と比較検討する。このため制御可能な最小磁場を異方性の小さな試料に対しても十分に小さく,偏曲素子による漏れ磁場を減少させる測定環境を整備する予定である。
|