研究概要 |
最終年度は,これまでに積み上げた深紫外線に対するダイヤモンドの受光感度の利得特性と永続的光伝導(PPC)特性を基に、そのメカニズムを同時に説明するモデルを構築し、受光感度を向上させるための深紫外線センシング学理を以下のとおり構築した。 (1)熱平衡状態ではp型ダイヤモンドエピ層/窒素ドープダイヤモンド基板pn^+接合のため、エピ層内のボロンアクセプタおよびアクセプタタイプの正孔トラップは基板内高濃度窒素ドナーによって補償されている。 (2)深紫外線が照射されている非平衡状態では、エピ層内で発生した電子-正孔対の内、電子は内蔵電界によって基板内にドリフトし、窒素ドナーイオンにトラップされる。空間的に分離されたトラップ電子とボロンアクセプタや正孔トラップ準位にある正孔との再結合速度が遅いため、結果的に準定常状態においてエピ層内の正孔寿命が長くなるとともに正孔が高濃度に蓄積される。この正孔蓄積が正孔の担う光電流の起源であり、利得特性の本質である。 (3)深紫外線照射を止めると、蓄積した正孔が減少し熱平衡状態へもどるまでの遷移時間によって、永続的光伝導が決まっている。律速する遷移プロセスは、エピ層内の深い正孔トラップ準位と価電子帯内正孔との遷移速度によって決まっている。 (4)ボロン濃度の増加は深い正孔トラップ準位濃度も増加させるため、深紫外線照射によって中性ボロンおよび中性正孔トラップから生成する正孔濃度が増加し、結果として蓄積正孔濃度が増加する。これが利得およびPPC速度がボロン濃度に強く依存する原因である。
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