研究概要 |
電解析出法により作製したNi-W合金は、フォトリソグラフィー法を組み合わせることにより精密成形が可能であり、また、300℃付近の加熱処理で大きな軟化を生じ、熱可塑性を示すために、硬質材料であるにも関わらず、低応力下での変形加工が可能である。本年度は、結晶粒サイズが約5〜6nmで、W含有量が約17〜20at.%材を作製し、これら合金の引張試験および疲労試験を実施し、機械的特性を明らかにした。 引張試験には、マイクロ精密部材への応用を視野に、紫外線フォトグラフィー技術を用いて、試験片平行部長さを4mm、平行部幅を0.5mmと0.05mmの試験片を作製した。疲労試験片の平行部長さは0.2mm、幅は0.1mmとした。試験部表面は#2000および#4000で荷重軸方向に機械研磨した。疲労試験は電磁式微小荷重試験機を用いて、応力比R=0.1の部分方不利、繰り返し速度10HZで実施した。試験片表面と破面の観察は、金属顕微鏡とSEMにより行った。破断までの引張試験は、試験片の幅広部を固定して、平行部における破断に固定箇所の影響が出ないように行った。Ni-17at.%W合金の場合、得られたヤング率は176GPa,引張強さは2.3GPaであった。室温における疲労限度は約1GPa、耐久比は約0.63と、いずれも非常に大きな値を示した。また、破面観察から、これら合金は硬質材料であるにも関わらず、軟質材料で見られる、引張時の延伸型ディンプル模様や、疲労時のストライエーション模様が明確に観察された。 一方、300℃以上での高温でのクリープ変形挙動はNi含有量が増加すると顕著に大きくなった。透過電子顕微鏡による観察の結果、Ni含有量が増加すると、Ni-richのナノ結晶組織を維持した偏析組織がネットワーク状に形成され、これが変形パスとして大きな作用をしていることが明らかとなった。
|