これまで実験上の困難さから十分に解明されていなかった廃棄物の処理プロセス、金属の回収プロセスで問題となるオキシクロライド化合物の生成挙動・機構を明らかにすることを本研究の目的とする。その基礎となる亜鉛、鉛などのオキシクロライド化合物の生成自由エネルギー、蒸発反応に関する熱力学的データ、生成、蒸発反応の反応速度などの速度論的データを測定した。 対象とする金属元素を亜鉛および鉛とし、金属オキシクロライドの生成と蒸発過程について調べるため、高い酸素分圧下で流動法により金属酸化物の塩化・蒸発挙動を測定した。酸素分圧、温度を変えて、アルミナ坩堝中の金属酸化物試料の塩化による重量減少量を測定し、金属塩化物の蒸発量、金属オキシクロライド化合物の蒸気圧を求めた。その結果から、亜鉛オキシクロライド、および鉛オキシクロライドの生成反応のギブス自由エネルギーを求めた。 また、酸素分圧、塩素分圧を変えて、一定時間毎のアルミナ坩堝中の亜鉛および鉛の金属酸化物試料の塩化反応による重量減少量を測定した。その結果から、酸化物の塩化反応と蒸発の過程を速度論的に解析し、反応機構を明らかにした。特に、酸素分圧の影響の実験では、酸素分圧が増加するに従い、塩化反応速度がわずかに増加することから、蒸発反応過程において亜鉛オキシクロライドが生成することで、蒸発速度の酸素分圧依存性を説明することができた。また、亜鉛オキシクロライドおよび鉛オキシクロライド化合物の安定な存在形態を明らかにした。 これらの測定から、金属元素の選択的な塩化反応を利用して、塩化物を経由した亜鉛、鉛などの有価金属を含む製鉄ダストなどの廃棄物を資源としたより効率の良い資源のリサイクルプロセスの可能性を示すことができた。
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