研究概要 |
平成18年度は以下の3つのプロジェクトを実施した。 (1)カルボキシル化ポリスルホンからのナノファイバー分子インプリント膜の創成 置換度0.88のカルボキシル化ポリスルホンを候補物質に採用し、D-あるいはL-体のN-α-ベンジルオキシカルボニルグルタミン酸を鋳型分子として含む高分溶液を15.0kVの電位、電極間距離10cmの条件でエレクトロスプレーデポジションを実施することにより、鋳型比0.5、1.0、2.0の6種類のナノファイバー分子インプリント膜を得た。これらの膜は不斉認識能を呈し、その選択性は採用した鋳型分子の絶対配置に依存した。また、鋳型比1.0の膜においては、光学分割能を示し、その透過選択性は1.15であった。 (2)不斉環境をもつ新規な不斉認識部位形成候補物質の創成 ジカルボン酸モノマーとしてN-位がアセチル基、ベンゾイル基で保護されたグルタミン酸を、ジアミンモノマーとして4,4'-ジアミノジフェニルメタンならびにm-フェニレンジアミンを採用することにより主鎖に不斉炭素をもつ4種類の新規なキラルポリアミドを創成した。表面プラズモン共鳴により、これらのキラルポリアミドが不斉認識能を示すこと、さらには膜分離により光学分割が可能であることを見出した。その不斉認識能は1.7に達した。また光学分割においては2を越える透過選択性を与えた。 (3)不斉認識部位形成候補物質としてのグリーンポリマーの創成 65°Cという比較的容易な条件下での培養可能な好熱菌であるGeobacillus thermodenitrificans DSM465に着目し、これより膜タンパクを抽出した。獲得された膜タンパクに簡易分子インプリント法を適用することにより分子認識材料へと変換し、この分子認識能を表面プラズモン共鳴により評価した。その結果、9-エチルアデニンを鋳型分子として用いることにより膜タンパクをアデノシン認識材料へと変換することが可能なことを明らかにした。
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