研究概要 |
(1)シリカLow-k層間絶縁膜 層間絶縁膜の低誘電率化実現のため、周期的構造を有するポーラスシリカに着目し薄膜化を行った。本研究では、従来の液相法とは全く異なる蒸気合成法を開発した。これは、シリカ源であるテトラエトキシシラン(TEOS)を蒸気で供給し、予め塗布しておいた界面活性剤薄膜と接触させる手法である。TEOS蒸気は界面活性剤薄膜に浸透し、界面活性剤/シリケートナノコンポジットを形成する。この複合体が徐々に相変化を起こし、チャネル型細孔構造や2次元ケージ状細孔構造を形成する。本手法は、比較的高い温度で合成するため、残存シラノール基の数が少なく、メソポーラスシリカ薄膜の耐熱性、水熱安定性、機械的強度に優れているため、液相法でみられた問題を解決するものと思われる。さらに薄膜とトリメチルエトキシシラン(TMES)蒸気を接触させ、薄膜内に浸透させた。TMES処理により薄膜は疎水化され、さらに機械的強度、水熱安定性が向上した。また、TMES処理薄膜の比誘電率は1.5-1.7という値であった。この値は2013年に実用化が期待されている比誘電率の値(1.9)よりも低い値であり、優れた層間絶縁膜になりうると考えられる。 (2)リン酸塩薄膜(プロトン伝導膜) 燃料電池やガスセンサー、リアクターの電解質として200-300℃で作動可能なイオン伝導体の利用が期待されている。規則的な細孔構造を持つメソポーラスリン酸塩は、無機材料であることから高い耐薬品性,耐溶媒性,耐熱性および機械的強度が期待できる.本研究では、シリカ骨格内をプロトン供与体であるリン酸基によって修飾したリン酸シリケート薄膜を蒸気浸透法により合成した。リン酸シリケート薄膜断面のFE-SEMで細孔がヘキサゴナル状に、周期的に配列していることが確認された。相対湿度0-80%の条件下でインピーダンス測定を行い、合成された膜のプロトン伝導度は湿度依存性はなく、約0.1S/cmと高い値を示した。骨格内に導入されたリン酸基によって,高いプロトン伝導性を得ることができたと考えられる.
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