研究概要 |
本プロジェクトはバイオマス, およびバイオマス由来化合物の高温高圧水中における反応を高温(400〜600℃), 高圧(40〜1000MPa)条件下で行い, その反応条件依存性の解明を回分式反応器および流通式反応器を用いて検討を行った. 回分式反応器を用いた極限条件(1000MPa)実験にはダイアモンドアンビルセルを用いた. 一年日は圧力40MPa以上(以下超高圧と定義する)で実験可能な流通式反応装置は市販のものでは装置が存在しないため, 装置の新規な開発を行った. 二年目は開発した装置を用いて超高圧条件下において六炭糖(D-グルコース, D-フルクトース)の高速変換(<1s)を無触媒で行い, 反応経路の解明, 反応機構の提案を行った. 本実験条件における六単糖の反応は脱水, レトロアルドール, 異性化, ベンジル酸転位であり, これの組み合わせにより多種の化合物生成することを明らかにした. その中でも脱水生成物(5-HMF, Frufral, BTO), 有機酸(乳酸)は圧力増加とともに収率の増加を示した. また, ダイアモンドアンビルセルを用いた超高圧条件(130〜180MPa)でのD-グルコースの変換反応の観察実験から昇温速度の増加は個体の生成が抑制し, 5-HMFの生成の促進することを見出した. 三年目には六炭糖の反応の定量的な議論を目的に, 反応生成物である3単糖(グリセルアルデヒド)、5単糖(キシロース)を出発原料として同様の実験を行い, 反応速度を評価し, これらの反応因子(水密度)依存性について検討を行った. 速度係数は水密度の増加にともない、ジヒドロキシアセトンの脱水反応, ピルブアルデヒドのベンジル酸位反応, ジヒドロキシアセトンからグリセルアルデヒドへの異性化反応は増加し, グリセルアルデヒドのレトロアルドール反応は減少することを明らかとした. このことにより本反応系における複雑・多種の反応が超高圧条件の提供により, 反応の促進、抑制が無触媒で可能であることを明らかにした.
|