1.昨年度の白金電極を挿入した回分型触媒反応装置で、電解により水素と酸素を生成しながら、同時に触媒反応を行うと、過酸化水素の生成速度が一桁増大することを明らかにした。その原因として酸素の直接電解還元による過酸化水素の生成の影響が大きいと推察したが、定量的な評価ができなかった。そこで、本年度は水素および酸素を発生させる装置として、流通式高分子電解質形電解装置(SPE電解槽)を使用した。反応液である臭化ナトリウムを加えた塩酸酸性水溶液をSPE電解槽のアノード側に供給し、アノード反応によって酸素を発生させた。酸素を含む反応液をアノード室出口から直接カソード室に供給した。カソード室では、電解還元作用により水素の発生と、溶存酸素の直接還元による過酸化水素の生成を確認することができた。電解温度、液流量などの条件を変えて実験を行ったが、電解温度10℃のとき電解反応による過酸化水素生成の電流効率は最大で1.2%であり、SPE電解槽は主に水素と酸素の発生を行うことがわかった。したがって、昨年度の実験で電解反応と触媒反応を同時に行った場合に過酸化水素の生成速度が増大するのは、電極反応で生成する中間生成物やラジカルが触媒反応の活性種として作用したと考えられる。 2.パラジウムカーボン触媒を被覆したポリマーチューブをマイクロリアクターとして、これにSPE電解槽を接続し、マイクロリアクターによる過酸化水素の合成を行った。触媒と反応液が効率よく接触するために過酸化水素生成速度が増大することを明らかにした。
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