石油化学基幹原料のエチレン・プロピレンの省エネルギー製造に関し、エタンやプロパンの酸化的脱水素を検討した。18年度の研究で、MgOにNiOを担持した触媒が高い活性、すなわち反応温度6000℃においてエタン転化率69%と、エチレン選択率53%を与えることを見いだした。 19年度はNiO/MgO触媒より低温で活性を示す触媒の探索を行い、高比表面積のZrO_2に硝酸ニッケルを担持したNiO-ZrO_2触媒が、450℃において、高いエタン転化率とエチレン選択性を与えることを見いだした。さらに、この触媒へ第3成分の添加の影響を検討し、NiとNaH_2PO_4を共含浸して調製したNi-P-ZrO_2触媒がより高い選択性を示すことを見いだした。Pの添加は反応中にNiOがエタンにより還元されて、Ni金属になりエタンの完全酸化が進行するのを抑制することが、触媒の光電子スペクトルの検討から明らかになった。この触媒は安定した性能を発揮し、長時間の反応においても、活性選択性の低下は認められなかった。 同じ触媒をプロパンの酸化的脱水素に用いると、プロパンの転化率は低下し、主として燃焼反応によりCO_2が生成する。Ni(NO_3)_2とZrOCl_2を水溶液とし、アンモニアを用いて共沈法により触媒を調製したところ、完全酸化が抑制され、プロピレンの選択性が上昇した。さらに、共沈法による触媒に対する、添加物の効果を検討したところ、Biの添加がさらに完全酸化を抑制し、プロピレン選択性が56.8%まで上がった。この値は、プロパン、酸素のみを供給原料に用いた場合としては現在報告されている中で最も高い値である。 これらの研究と関連して、脱水素反応機構解明を目的として、エチルベンゼンの脱水素触媒上でのRedox機構を過渡応答法により検討を行い、この手法が触媒表面反応の解析の優れた方法であることを明らかにした。
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