結晶化したメソポーラス遷移金属酸化物内にドープしたヘテロ元素の触媒特性の検討を目的に研究を行なった。このため、先ず比較研究として、何もドープしていないメソポーラス遷移金属酸化物の特性を、過酸化水素を用いたオレフィンの酸化反応にて評価した。初年度においてはアセトニトリル溶媒中での反応で、酸化タンタルの疎水的な空間がシクロヘキセンの取り込みに有効的に用いられ、単位表面積あたりの活性が非多孔体を遥かに上まることがわかった。活性点としてチタンを酸化タンタルおよび酸化ニオブにドープした触媒の調製も行なったが、酸化タンタルメソポーラス材料ではチタンドープの効果は観られなかった。19年度では酸化ニオブメソポーラス材料についての検討を行なった。メソポーラス酸化ニオブでは、アセトニトリル溶媒中60℃でシクロヘキセンの過酸化水素による酸化反応を行なうと、アモルファス材料ではジオールの選択率が、結晶材料ではオキシドの選択率がいずれも80%以上であった。おなじメソポーラス構造を有する酸化ニオブであるが、無機骨格がアモルファスの場合と結晶化した場合で異なる生成物を高選択率で得ることができた。さらに溶媒効果などの反応条件を検討した結果、結晶性メソポーラス酸化ニオブを用いてメタノール溶媒中40℃でシクロヘキセンの過酸化水素による酸化反応を行なった結果、2時間で12%の転化率、97%の選択率を持ってシクロヘキセンオキシドを得ることができた。 過酸化水素を用いたオレフィンの酸化反応では工業的にはゼオライトが用いられているが、本研究で用いたシクロヘキセンの様にゼオライト細孔より大きな分子の反応には用いることができない。この点で、結晶性メソポーラス酸化ニオブは低い反応温度で非常に優れた触媒特性を示すことが明らかになったことは、学術的な意味のみならず実用触媒開発においても重要な価値があると考えられる。
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