研究概要 |
本年度は、シルセスキオキサン部位を有する新規配位子を合成し,パラジウム種と組み合わせることでアルコール類の空気酸化反応に有効な触媒を調製した.シラノール基を有するシルセスキオキサンから,エチニルシリル基を有する分子に導き,さらにプロモピリジン類との薗頭カップリング反応により新規配位子((c-C5H9)7Si8012-OSiMe2-CC-C5H4N)を合成した.酢酸パラジウムおよび新規配位子(モル比1:1,Pd 0.10mol%)を触媒として用い,ベンジルアルコールの空気酸化反応を80℃で20時間行ったところ,収率97%で選択的にベンズアルデヒドが得られた.配位子としてピリジンを用いた場合には反応開始後直ちに黒色の沈殿が生成したが,シルセスキオキサン配位子を用いた場合には沈殿の生成は認められず,直径2nm程度のPd種ナノクラスターを含む黒褐色透明溶液を形成したことが特徴的である.すなわち、シルセスキオキサンの高い有機溶媒に対する親和性を活かし,沈殿の生成を抑制することで優れた触媒活性が保持されたものと考えられる. さらに、籠状シルセスキオキサンの重合による多孔質ゲル触媒が調製に係る予備的検討を行った.チタン架橋型シルセスキオキサンと,籠状シルセスキオキサンを複合化させたところ,最高約700m2g-1のBET比表面積を有し,直径1.5nm以下のミクロ細孔を中心として幅広い細孔径分布を示す多孔質ゲルが得られることを見出した.これらは過酸化水素水を酸化剤とするアルケンのエポキシ化反応に優れた触媒活性を示したが,有機溶媒中でのtBuOOHを酸化剤とする反応に対しては低活性に留まった.
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