本研究では新規金属含有籠状シルセスキオキサンを活用した、回収再利用が容易で環境負荷の少ない有機合成プロセスを可能にする不均一系触媒の開発に取り組み、本年度は以下に示した結果を得た。 【1】チタン架橋型シルセスキオキサンおよび籠状シルセスキオキサン類から構成されるゲル触媒について、調製条件がゲルの細孔構造、および過酸化水素水を酸化剤とするアルケンのエポキシ化反応に対する触媒活性に及ぼす影響を系統的に検討した。その結果、Si-H基を有する原料とビニルシリル基を有する原料の比を制御することで、ほとんど比表面積を有さないゲルから700m2/g以上の高比表面積を有するゲルまで自在に調整できる手法を見出した。中でも比表面積をほとんど有さないゲルが高い触媒活性を示したが、これらは若干の活性低下を伴うものの再利用が可能であった。 【2】チタン含有シルセスキオキサンをシリカ系担体に化学的に固定化する手法により、過酸化水素水あるいは有機過酸化物を酸化剤とするアルケンのエポキシ化反応に高活性を示す触媒を開発した。これらの触媒は、チタン含有シルセスキオキサンを均一系触媒として用いた場合の約2倍のTOFを示し、高い触媒活性を有することが判明した。また、繰り返し再利用しても活性の低下はほとんど認められなかった。 【3】アルコールの空気酸化反応等に高い活性を有するシルセスキオキサン保護パラジウムナノクラスター触媒を不均一系触媒に展開するため、予備的検討として、固体材料化の手がかりとなるビニル基等の反応部位を併せ持つシルセスキオキサン配位子を合成した。例えば、Pd触媒存在下でのオクタビニルシルセスキオキサンと3-ヨードピリジン間のMizoroki-Heck反応によって1つあるいは複数個のピリジル基が導入された籠状シルセスキオキサンを調製した。
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