廃熱を回収しながら低温で作動する触媒の新たなる体系を作り、その学理の探求、及びこれらを用いた新規反応プロセスの開発といった新たなる領域を開拓するために研究を進め、平成21年度は電場中での触媒作用がどのような学理によってその機能を発現しうるかについて、さらなる詳細な研究を行った。触媒の担体として、セリアやチタン酸ストロンチウムなどの電場によって活性化を受けやすい酸化物固体表面を用い、酸化物表面に活性金属種である白金やパラジウム、ロジウム、ニッケルなどを担持し、これらを粉体に成型し、反応器に充填した。反応器内部に数百V、3mAの静電場を印加しメタンなどの原料ガスを供給し出口ガス組成をガスクロマトグラフによって測定した。また、反応後の触媒を水素気流中で熱重量分析を行うことで、格子酸素の反応への寄与を検討した。その結果、反応前よりも反応後の触媒の方が格子酸素が消費されており、その序列は、fresh>10min>20min≒30minとなった。このことから、触媒担体であるCeO2の表面格子酸素が反応中に使われ、電場によって表面の酸素種が低温で脱離しやすい状態に変化し、反応時間により放出する格子酸素の量が増えていることがわかった。また電場がない場合すぐに活性を失うことから、CH4またはCOが格子酸素によって酸化され、それによって生じた格子欠陥vがH2Oの還元により復元されるサイクルで反応が進行しており、電場の印加により供給された電子が、格子酸素の補充を促進していると考えられる。投入電力に対する生成物の熱量の割合は146.7%となり、さらに反応における低位発熱量基準でのエネルギー効率も66.7%と非常に高い値となった。 これらより、電場を印加した系における低温での触媒反応の学理があきらかになるとともに、電場触媒反応は非常に効率の良い有効なプロセスであることが示された。
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